総選挙の結果、「左翼」と言われる諸政党の議席も得票数も後退しました。これに対して、改憲を公言している自民党、日本維新の会、みんなの党の合計議席は衆院で改憲発議が可能な3分の2を超えました。今夏の参院選でも、これら3党が3分の2を越えれば、衆参両院で改憲発議が可能になります。
ただし、改憲が発議されても、すぐに国民投票を実施するというわけにはいきません。それは、18歳選挙権などの制度的法的整備が完了していないからです。当面、安倍首相は、参院での多数回復とともに、憲法審査会での議論を進め、同時に、国民投票に向けての制度的な整備を行うことになるでしょう。
これを阻むためには、第一に、参院選で改憲勢力による3分の2の突破を阻止すること、第二に、国会論戦で憲法審査会での議論や制度整備の意図を打ち砕くこと、第三に、改憲阻止の大運動によって世論を変えていくことが必要です。改憲阻止に向けての取り組みは、選挙、国会、世論という三つの場で同時並行的に推進されなければなりません。
そのためには、結集できる限りの広範な勢力を糾合することが必要です。安倍首相の登場によって改憲の危機は高まり、当面、改憲手続きを定めた憲法96条を突破口にしようと狙っています。今日の政党間の力関係において、これを阻むことは極めて困難であり、一党一派によって成し遂げられるような生やさしい課題ではありません。
そこで、改憲阻止に向けての「大左翼」の形成を呼びかけたいと思います。表題に「再び」と書いたのは、今から20年前、1993年5月に法律文化社から刊行した拙著『概説・現代政治-その動態と理論』の「あとがき」で、次のように書いたことがあるからです。
「ただでさえ、日本における『左翼』は少数派であり、その発言力は弱体化しつつあるように見える。これは、政治的な対抗関係を弱め、政治の多元性を堀り崩す点で、現代政治にとっても好ましいことではない。いま求められているのは、『反共』でも『反共分子』の排除でもなく、『大左翼』の結集によって『左翼的空間』を拡大し、保守政治に対抗し得る新しい政治勢力を作り出すことであろう。
この新しい政治勢力は、保守政治に対抗できるだけの量、力を持たなければならないが、同時に保守政治を根本的に転換できるだけの新しい質、政策、展望を持たなければならない。そのためには、保守政治と手を組むことを潔しとしないすべての勢力が協力・共同する必要があろう。」(372頁)
今日の国会状況からすれば、「保守政治に対抗できるだけの量、力」を持つことは困難かもしれません。しかし、改憲を阻止するだけの影響力を獲得することは可能でしょう。一度は、政権交代によって「保守政治に対抗」する可能性を生み出したのですから……。
残念ながら、政権交代の中心になった民主党は「保守政治を根本的に転換できるだけの新しい質、政策、展望」を持つことができませんでした。そのために、保守勢力の政権復帰と改憲の危機を生み出すことになりました。このような失敗を繰り返さないためには、「保守政治と手を組むことを潔しとしないすべての勢力が協力・共同」して「新しい政治勢力」を形成し、「保守政治を根本的に転換できるだけの新しい質、政策、展望」を示す必要があります。
そのための努力を、ぜひ始めて欲しいものです。20年前の呼びかけを、いま再び繰り返さなければならないのは誠に残念ですが、このような情勢ではやむを得ません。憲法を変えてはならないと考えるすべての勢力・人々の大同団結によって「大左翼」を形成することを、いま再び、呼びかけたいと思います。 (法政大学大原社会問題研究所教授)
五十嵐氏の提起に全面的に賛同します。この論功を弊blogに全文転載させていただきました。http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/25736425.html
昨年9月にドイツ左翼等本部を訪れ、綱領委員、国際局長、そして各「潮流」代表と、それぞれ会談しました。のべ14時間にわたる濃密な討議でした。民主主義的な社会主義という共通の目標の下で、異なる思想を持った人びとが大結集して単一の政党を形成し、連邦議会で第4党の座を占めています。むろん困難にも遭遇していますが、新自由主義への対抗勢力結集の軸となっています。しかもヨーロッパ各国にも友党が拡がりEU議会にも会派を結成しています。複数主義、それは忍耐と相互理解を要します。日本にも大左翼党を。その前段としてまずは、反自由主義・護憲の単一選挙同盟を。見果てぬ夢に終わるのでしょうか?