71年前、日本が真珠湾攻撃を機に太平洋戦争に突入した日の12月8日、この日を忘れまいと,集会を開いた日本ジャーナリスト会議(JCJ=Japan Congress of Journalists)が緊急アピールを出し、会場で配った。この団体の名は一般の方はあまりご存じないと思うが、かつて日本の新聞や放送が侵略戦争のお先棒をかついだことを痛恨の思いで反省したジャーナリストたちが「ふたたび戦争のためにペンとマイクをとらない」と誓って1955年に創立された。初代議長は当時の岩波書店発行『世界』編集長、吉野源三郎氏であった。
略称JCJは、毎年、終戦記念日の8・15とともに、12・8に集いを開いてきた。私自身は、この日、病後の体調不良で参加できなかったが、出席した友人は、メールで緊急アピールを全文送ってくれた。アピールは、今、最終盤にさしかかっている総選挙に当たって国民に訴える、として、「憲法の危機に、憲法を守り活かす勢力の前進を」とよびかけている。
実際、今回の総選挙で安倍総裁・石破幹事長コンビの自民党は「自衛隊を国防軍にする」と憲法改正を公然と掲げた。「日本維新の会」も「自主憲法の制定」を公約にしているにもかかわらず、マスコミはそれらを重要な争点としてまともに取り上げ、論じようとしない。
緊急アピールはさらに、民主党も「専守防衛」に代えて「動的防衛力」を唱え、集団的自衛権解釈の変更を打ち出していること、「安全保障基本法」を唱える日本未来の党、「憲法改正の考え方」を持つみんなの党、「加憲」を主張する公明党も含め、「今回の総選挙では、改憲を明確に掲げる政党の動きが際立っている」と指摘している。
ところが、マスコミがまともにふれようとしないうえ、各政党もNHKの政見放送などでは改憲公約にほおかむりしているので、有権者が気付かないうちに改憲への大波が忍び寄っているのが現実なのだ。
アピールは、各種争点のすべての根幹が日本国憲法にあることに言及したうえ、「今回の総選挙の結果によっては、戦後日本を形作ってきた憲法とその精神を捨て去り、再び戦争をする国に進む危険をはらんでいる」と警告、「これらの政党が衆議院の多数、特に3分の2の議席を獲得すれば、改憲策動がさらに進む危険は明白だ」と切迫した状況にあることに注意を喚起している。
「問われているのは、改憲勢力が議席を伸ばすのか、それとも改憲に反対し、憲法に基づく政治を目指す勢力が前進するか、である」と端的に問題を投げかけ、主権者国民が、その投票行動で憲法改悪をもくろむ勢力に厳しい審判を下し、憲法を守り活かす勢力の前進を促すよう、訴えている。
再び「戦争をする国」にしていいのか──かつての侵略戦争への反省から生まれたジャーナリストたちの心ゆさぶる訴えとして受け止め、急速に広めていきたいと思う。(フリーライター)